こちらで告知するのをすっかり忘れていましたが、グループ展に参加していました。
実に5年ぶりの展示だったのですが、アクリル板にサイアノタイプ(と少しだけチバシステム)でプリントしたプリントを3枚重ねて額装するという展示を行いました。
作品名を「昭和の残香」とした、戦後のヤミ市を発祥としている商店街の写真です。タイトルが「残光」でも「残り香」でもないのは、表現したいものは「残り香」だけど、表現が光を捉える写真なので「残光」の音と重ねてみました。
単純な空間の奥行き感と、時間の奥行き感を表現したくて「そのまんま(物理的に)奥行き出してしまおう!」ということで、透明アクリルへのプリントと積層を思いつきました。
で、今回の制作メモ。
ちなみに十分に水洗できないとか、乾燥進むとゼラチン被膜が剥離するとか課題も多々あるので、以下処方でうまくいくわけではないですが、一応絵は出ます。
ネガの準備
- デジタルで作業
- 近景、中景、遠景を3レイヤに分割
- デジタルネガフィルム用のフィルムシートにインクジェットプリント
- QTP使うつもりだったけど、トーンカーブ忘れてたのと参考サイトが閉鎖してたので、Photoshopで適当にトーンカーブ処理してプリント
- フィルムシートはArista II Inkjet OHP 7mil Transparency Filmを使いました。
印画紙?の準備
- 透明無色のアクリル板 1mm厚 11×14(大四切)
- 感光材
- サイアノタイプ感光薬(古典タイプ) 50ml
- 2% ゼラチン溶液(粉ゼラチン1g + お湯50ml)
- 絵具少々(サップグリーン、バーントアンバー)
- ドライウェル少々 2mlくらい
- アクリル板に5mlほどの感光材をアクリルパイプなどを使ってクレープを焼く要領で薄く塗布する
- 紫外線が当たらない場所で乾燥させる(ちなみにゼラチンを含むせいで感想には湿度によりますが12時間以上かかると思います)
焼き付け
通常のサイアノタイプと同じ。
自家製の紫外線露光機(紫外線蛍光灯20W 5灯)では8分ほどでした。
現像/水洗
- 水道水(あればオキシドールを10%程度入れる、なくてもよい)をくぐらせる。
- 感光材が剥離してしまうので、素早くひとくぐりが限度(ただし水洗不足になる)
で、作成直後は冒頭の写真のように出来上がるのですが、今回の展示会期2週間が経過した後は、水洗不十分により額内の酸素と反応が続いてしまい、こんな感じになってしまいました。
でも、アーカイバルの要素(=販売とかも含む)を無視すれば、意図的に水洗不十分にして会期中に変化させることもできそうです。